■ 日時: 2025年3月8日(土曜日) 14:00〜17:00
*対面とオンラインによるハイブリッド開催
■ 対面参加会場: 西南学院百年館1階 多目的ホール
■ 交通:福岡市営地下鉄空港線「西新駅」から徒歩5分
■ オンライン参加(Webex):
ご希望の方は、コチラ より2025年3月6日(木)24:00までにお申し込みください。例会前日までに Webex のリンクをお送りします。
■ 内容: シンポジウム「絵はがきの蒐集:イメージを所有することの政治性と愉悦」
趣旨説明:柳沢史明(芸術学、西南学院大学)
研究発表1: 小原真史(写真史、東京工芸大学)「複製される博覧会」
スーザン・ソンタグは『写真論』の中で「写真を収集するということは世界を集めることである」と述べたが、19世紀半ばのロンドンで産声をあげた万国博覧会は、写真が行うのとは別の方法で世界をひとところに集めようとした試みであった。20世紀初頭にかけて欧米諸国と日本に広がりを見せてゆく博覧会は、世界の文物や集落までをも都市部に集め、それを写真や版画、絵葉書に複製して、博覧会を訪れていない人々の元にまで会場の活況を届けた。本発表では、博覧会と複製メディアとしての絵葉書の共通点を挙げながら、博覧会に関わる絵葉書を複数枚並置することで見えてくる他者表象の方法などについても考察する。
研究発表2: 田邉恵子(近現代ドイツ思想・文学、新潟大学)「幸福への憧憬:ベンヤミンの「絵はがきの理論」」
戦間期ドイツのユダヤ系文筆家ヴァルター・ベンヤミン(1892-1940年)は、古書、切手、そして絵はがきの蒐集家であったことでも知られ、蒐集対象にまつわる考察やエッセイがいくつか残されている。しかしながら、1920年代〜30年代にかけて旅行記や幼年期回想作品など複数のテクストにおいて絵はがきについての描写や考察が断片的に認められるものの、彼自身がある草稿に記した「絵はがきの理論」はまとまったかたちでは残されなかった。構想されながらも書かれなかった「絵はがきの理論」――本発表では19世紀末にはじまるドイツの絵はがき史を踏まえつつ、いくつかのテクストの読解によってベンヤミンの絵はがきにまつわる考察を再構成し、その内実を探ってみたい。
研究発表3: 柳沢史明(芸術学、西南学院大学)「手のひらの上の植民地アフリカ」
絵はがきに印刷されたイメージは、雑誌や新聞よりも容易く人々の手から手へと流通する。記事とともに文脈化されていた雑誌や新聞に掲載された写真図版は、絵はがきへと転載されることでその背景知識は希薄化し、イメージそのものの強さが強調されることとなる。亜熱帯の風景、多様な装飾品や祭礼具を身に着けた人々、民族の「典型」として紹介される女性たちを写した絵はがきは、植民地を描写した絵画や映画同様、民族誌的情報を帯びアフリカに関する一定の「知」を提供するが、西洋人らの狩猟の対象となった大型動物たちや半裸で生活する女性たちを写した絵はがきの存在は、植民地に対する暴力やエロティシズムも物語っている。蒐集され一枚一枚手のひらのうえで眺められる絵はがきは、植民地に対する知識と欲望を次から次へと刺激するメディアとして機能するのである。本発表では、20世紀前半の植民地西アフリカの絵はがきのイメージとその流通過程を手がかりに、蒐集のなかで生起する絵はがきの文化政治的な機能について考察したい。
コメント:柿木伸之(美学・哲学、西南学院大学)
全体討議
■ 担当理事:柳沢史明
本シンポジウムは科研費(20KK0017)と共催になります)
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