第169回研究例会 2023.10.28(土)

■ 日時: 2023年10月28日(土) 13:00〜15:30

Zoom によるオンライン開催

参加ご希望の方は、コチラ より2023年10月25日(水)24:00までにお申し込みください。例会前日までに Zoom のリンクをお送りします。

■ 内容:

研究発表1: 山本 遊(美術史、文化政策・大阪大学人文学研究科コースアシスタント) 
「占領期文化政策研究における本土と沖縄の分断」

 第二次世界大戦後、占領下の日本本土では、GHQ/SCAPによる文化政策が進められた。文化・芸術などを管轄するため、CIE(民間情報教育局)内にArts & Monuments Division(美術記念物課)が置かれ、文化財の調査・保護、文化財保護法の改正、美術の民主化などが進められたことが近年の研究で明らかになっている。しかし、その詳細な活動内容についてはまだ不明な点も多く、GHQ/SCAPがこのような活動をしていたこと自体も広く認知されているとは言い難い。一方、沖縄の占領期についてはこれまで活発に研究が進められてきた。占領下の文化政策と沖縄美術界の関係については、「ニシムイ美術村」を中心に研究が展開されており、展覧会などを通して戦後沖縄美術史の正史となりつつある。こうした研究の蓄積の差に加え、本土と沖縄の占領体制の違いなどもあり、両者についての研究は分断された状態にある。
 本発表では、こうした研究上の分断の背景を探るとともに、本土と沖縄における占領期の文化政策を比較し、分断を解消するきっかけとしたい。

研究発表2: 中山 龍一(美術史・ニューメキシコ大学芸術学部博士課程)
「経済政策としての先住民美術振興:ニューディール時代の米国南西部の事例」

 本発表では、合衆国南西部に注目して、ニューディール政策時代の連邦政府による先住民美術行政を概観する。1930年代に連邦政府は、いわゆる「インディアン・ニューディール」と呼ばれる、一連の先住民政策の転換の一環として、積極的な先住民美術の保護・奨励を開始した。インディアン美術工芸法(1935年)をはじめとするこの時期の諸政策は、先住民共同体に対する経済政策として構想された。同時にニューディールの先住民美術行政は、それに先立って、先住民文化と大衆消費社会との接触や同化政策の負の影響に対して、文化ナショナリズム、プリミティヴィズム的な関心から、一部の文化エリートの構想する「本来の先住民美術」を取り戻そうとする取り組みを継承するものでもあった。 

■ 担当理事: 礒谷 有亮